ニワトリと不良の私
私が小学校3年生の頃のことでした。
今振り返ると、当時から私には不思議な力が宿っていたのか、私が飼う生き物はとっても長生きをしていました。
近所のお祭りの露天で母が買ってくれた “ひよこ” についての出来事です。
お祭りのひよこには赤や黄色や緑の色が付けられていました。
ひよこを家に連れて帰ることができた私は、嬉しくて、毎日、ひよこ達の頭を優しくなでて語り掛けました。
「 大きくなるんだよ、そして元気なニワトリになってね 」
私はありったけの愛情を注いだのです。
私が可愛っがってよく面倒をみていたので、それを見た両親は地元のお祭りの度にひよこを買ってくれました。
その数はだんだん増えて十数羽になっていました。
ひよこ達は順調に育ち、時間が経つと、私の願い通り、次々にニワトリへと成長していったのです。
十数羽のニワトリ達のために、父が酒箱を壊した板を材料にニワトリ小屋を作ってくれました。
ニワトリ達は、小屋の中を、水を得た魚のように、元気に飛び回っていました。
私たちの家は田舎とはいえ住宅地で、お祭りのひよこがニワトリになったことが近所で評判になっていました。
お祭りのひよこは丈夫ではなく、すぐに死んでしまうのが当たり前だったからです。
そんなある日のこと、ニワトリの異変に私は気がつきました。
よく見ると十数羽いたはずのニワトリが、一羽、一羽と数が減っているではありませんか。
不思議に思った私は、母に尋ねました。
「ニワトリがいなくなってない?お母さん、どこにいったか知らない?」
「そうだね、きっと囲いを越えて逃げ出しているんだよ」
母の態度がどうも腑に落ちなかった私は学校から早めに帰って確かめてみよう思いました。
ある日の午後です、私は目の前の光景に唖然としました。
なんと、見たこともないおじさんが、自分の両肩に私のニワトリ二羽を逆さづりにぶら下げて、私の家の方から歩いてきたのです。
おじさんは、ぐったりとしたニワトリを担いだまま私の前を過ぎ去って行ってしまいました。
「おかあさんは嘘つきだぁー」
家に戻った私は泣いて母に食って掛かりました。
母はそれでも、「ニワトリは動物園に行ったのだから大丈夫よ」 と渋々言うばかり。
いくら小学3年生の私でもその程度の話を信じれるほど幼稚ではありません。・・・・・
今となっては笑い話ですが、
その時、”不良になってやろう”と、親に対して初めてひねくれた瞬間でした。
後日談によると、十数匹のニワトリが元気にいっせいに鳴いたりすることで、さすがに近所から苦情が来ていたそうです。
それはそうですよね、毎朝夜明けと同時に 『 コケコッコー 』 の大合唱だったんですから ・・・。
今思えば、母の中では、私の子供心を思いやる気持ちと、現実的な苦情との板ばさみだったと思います。
コミカルだけど少しホロ苦い思い出です。
でもニワトリって本当に 『 コケコッコー 』 って鳴くんですよ〜。
皆さん聞いたことありますか?